WDWで蚊を見かけない理由
ウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)には、「蚊がいない」噂を聞いたことはありますか?
正しくは、「WDWのマジックキングダムには蚊がいない」ですが。
今回は、その噂の真相について深掘りしてみます。
2023年7月25日にYouTube動画をアップしました。
内容はこのブログより濃い情報です。
フロリダ州は、一年中温暖な気候であり、湖が多く自然が豊かな土地です。
そのため、年中蚊はいますが、春・夏・初秋はどうしても蚊の数がかなり多くなります。
厄介なことに、刺されてかゆいだけではなく、西ナイル・ウイルス、ジカ・ウイルス、マラリアなど蚊が媒介する病気にかかる危険にさらされる可能性もあります。
見るからに自然豊かで、虫が多そうなWDW👇
1964年のニューヨーク万博からの計画
WDWのマジックキングダムでの蚊の対策は、なんと建設計画段階から考慮されていました。
ウォルト・ディズニーは、マジックキングダム建設のためにフロリダ州の中央部にある数千エーカーの土地を購入。
当然、未開拓の土地はどこも高温多湿の沼地で、ワニを始めとするたくさんの野生動物や、蚊が生息しています。
安心安全なパーク運営をするため、ウォルトは病気を媒介する蚊をどうにか駆除する方法を模索していました。
そんな時1964年のニューヨーク万国博覧会で、とある方と出会います。
その方の名前は、ジョー・ポッターの愛称で有名な ” ウィリアム・E・ジョー・ポッター” 退役陸軍大将。
ウィリアム・E・” ジョー” ・ポッター大将は、アメリカ陸軍に38年間在籍し、パナマ運河地帯の政府を務めた後、1965年にウォルト・ディズニー本人に採用され、ウォルト・ディズニー・ワールドのインフラ設備を指揮しました。
(中略)
ウォルトは、彼が過去に行ってきた実績を踏まえ、彼にウォルト・ディズニー・ワールドの建築監督を任せたのです。
沼地であったWDWの土地を、どのように管理するのか、ジョー・ポッターの手腕が試されました。
当時画期的であった、地下ユーティリティと下水道、電力、水処理施設などWDWのインフラ設備を指揮しました。それは今でも、地下の排水路は「Joe’s ditches(ジョーの側溝)」と呼ばれています。
https://florlando2881.com/walt-disney-world-ferry-boat/#toc9
当時のEPCOT計画担当副社長、ウィリアム・”ジョー”・ポッター氏とともに、フロリダ計画(現在のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート)の計画を発表しました。
中央の方が、ジョー・ポッター氏です。
ジョー・ポッター氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業した工学の専門家。
マラリアを媒介する蚊が多い地区のパナマ運河地帯の指揮官をしていた、当時の「害虫駆除の専門的知識と現場指揮力」の経験を活かしマジックキングダムに「Joe’s ditches(ジョーの側溝)」の地下排水路を構築します。
ニューヨーク万国博覧会のポスター。
ここでの運命的な出会いがなければ、害虫駆除対策はどうなっていたことか…👇
ジョー・ポッター氏の功績を讃え、名を冠したフェリーボート👇
意見の一致
ウォルトはマジックキングダム建設計画の際に、ジョー・ポッター氏に、このようにお願いしました。
パーク内ではなるべく薬剤を使用せず、自然な方法で蚊を駆除したい。
それに対してジョー・ポッター氏の答えはシンプルでした。
蚊の成虫を駆除する考えではなく、そもそも蚊が卵を産みつけない環境を作れば良い。
パナマ運河建設で学んだ方法を用いれば、我々は害虫との戦いに勝利できるだろう。
こうして、闇雲に殺虫剤などの薬剤を使用せず、安心安全な方法で害虫駆除を希望するウォルトの意見は受け入れられたため、ウォルトはその場でジョー・ポッター氏を建築監督としてリクルートしたのです。
なによりも大事な水の循環
そもそも、蚊が卵を産みつける場所は淀んだ水です。
フロリダ州オーランドの湿地や沼地は、ボウフラにとって絶好の繁殖地でした。
そこで、パーク内に淀んだ水たまりを作らず、常に水を循環させることが絶対条件となります。
ジョー・ポッター氏が設計した「Joe’s ditches(ジョーの側溝)」と呼ばれる排水路があるおかげで、敷地内では、水は滞ることなく流れを作っています。
マジックキングダム内での一例を挙げると、今はなき「スプラッシュ・マウンテン」のアトラクションでは水路に沿って、常に水の流れができています。
そのため、蚊が卵を産みつけることはほぼ不可能です。
水の循環はとても大事👇
パーク全体のデザインも考えられています
パーク全体の配置も、水が淀むことのないようきっちり計算された設計がされています。
パーク内(アトラクション含む)や、隣接するリゾートホテルは、カーブを描く構造をして、それぞれ水が溜まりにくい形状をしています。
ハリケーンによる降水量が多いオーランドでは、水はけの良いパーク作りはとても重要です。
植物も生物も計算されて生息しています
植物も大活躍
パークに植えられた植物も、葉に水が溜まりにくい植物が採用されています。
葉から落ちた水滴は、「Joe’s ditches(ジョーの側溝)」や噴水、アトラクションの水域などに集められて流れていく仕組みです。
またパーク内には、ハーブの「シトロネラ」がたくさん植えられています。
シトロネラには、蚊が嫌う成分のシトロネラールが含まれているため、忌避効果があります。
天然の虫除けとしては最高のハーブです。
淡水魚も大活躍
ジョー・ポッター氏はパーク内の湖や沼地に放流する淡水魚にも配慮します。
蚊の幼虫(ボウフラ)を好んで食べる
・「カダヤシ ”蚊絶やし”」(別名 タップミノー or アメリカメダカ) 、英語名は「モスキートフィッシュ」などが選ばれました。
モスキートフィッシュについて学ぼう!
2 オスは3.8cm、メスは6.4cmくらい
3 妊娠中のメスのお腹には仔魚がいるので黒っぽく見える
4 世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれている
5 モスキートフィッシュは、蚊の駆除や、デング熱、マラリアなどの病気対策として世界各地に放流されました
メスの方が大きいのですね。
「世界の侵略的外来種ワースト100」の他にも、日本でも「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。
日本の在来種であるメダカを捕食したり、生態系が崩れる影響が出てきているためです。
鳥類も大活躍
WDWの敷地内には、昆虫を補食する鳥のための巣箱があちこちに設置してあります。
また、アヒルやカモの野鳥も、ボウフラを捕食してくれます。
WDWではどの種類の蚊が多いのか、アヒルなどの鶏を定期的にチェックして、害虫駆除の調整をしています。
だから、WDWにはシロトキ、カモ、アヒルなどが多いのですね!
謎が解けました。
湿地帯は生物の宝庫です。
WDWにたくさんいる野生生物に書きました👇
にんにくスプレー
これだけ対策を講じても、万が一蚊が大量発生してしまったら…
大量発生とまではいかなくとも、ゲストに不快な思いを少しでもさせないよう、マジックキングダムでは毎日行なっていることがあります。
パークの野外に、にんにくエキスを噴霧しています。
ジョー・ポッター氏は、蚊がにんにくエキスが苦手なことを知っていました。
にんにく噴射の量は、人間にはわからない程度の調合されたエキスなので、匂いの心配はご無用です。
さすがに建物の内部には、いくら匂いを感じないとしてもにんにくエキスは使用しません。
安心してください。
パーク閉鎖後に、天然の除虫菊を噴霧しています。
日本でもお馴染みの、これですね👇
こちらは化学物質過敏症の方でも使用できると、レビューがありました。
マジックキングダム以外の敷地内は
睡蓮の花
マジックキングダムやエプコットの湖、池、川などの水辺では、睡蓮は見かけません。
睡蓮は、ボウフラが葉の裏側に隠れるのに最適な場所だからです。
しかしアニマルキングダムでは、睡蓮が浮かんでいるのを見かけました👇
アンケート結果
2019年に、このようなアンケートを取った方がいました。
・アニマルキングダム
・エプコット
・ハリウッドスタジオ
・ディズニースプリングス
やはり、圧倒的にアニマルキングダム!
動物たちが暮らす楽園なので、なるべく自然のままの状態を保っています。
やはり、蚊などの虫は多いです。
WDWオフィシャルホテルにも、大自然の森の中にある宿泊場所は対策が追いつかないので蚊が多いです。
例えば、ディズニー・サラトガ・スプリングス・リゾート&スパのツリーハウス・ヴィラ👇
ディズニー・フォート・ウィルダネス・リゾート・キャンプサイト👇
春~初秋に訪れる際は、虫よけブレスレットが必須でしょう。
手首や足首につけると、ゴムが伸びてせっかくのかわいい形が台無しになります。
カバンや服につけるのがいいかもしれません。
2016年のジカウイルス
2016年 フロリダ州全土に蚊が媒介するジカウイルスへの恐怖が広まりました。
そのためWDWでは、ゲストに安心してもらうために率先して予防措置の強化を取りました。
蚊に関する注意書きや、無料の虫除けスプレーを用意したステーションがリゾートのあちこちに設置されました。
こうした危険なウイルスを媒介する蚊に対しては、やはり虫除けスプレーなどで対処するしか方法がないでしょう。
蚊は「人類最大の敵」であると言われています。
蚊が媒介する感染症で、毎年世界中で100万人以上が命を落としています。
これは戦争よりも多いのです。
フロリダ州に遺伝子操作された蚊を放つ作戦
最後に、人類最大の敵である蚊を撲滅大作戦?を決行したものすごい話をどうぞ。
オーランドと同じフロリダ州の気になる蚊のニュース。
日本でも話題に上がっていたので、知っている方は多いと思います。
2021年4月29日に投稿された記事をまとめました。
引用元 https://www.today.com/news/nearly-144-000-genetically-modified-mosquitoes-be-released-florida-t216740
フロリダ州で、約14万4千匹の遺伝子組換え蚊を解き放つ。
空中散布も実施
フロリダ・キーズでは、遺伝子操作されたオスの卵を放流する以外にも、殺虫剤の空中散布もしています。
午前(6:30AM~8:30AM)
天候が許す限り
ヘリコプターミッション
1.)アッパー・キー・ラーゴ(マイル標識102-106.5)
フロリダ・キーズ モスキート管理区域は天候が許す限り、
ヘリコプターによる液体殺虫剤の空中散布を開始する予定です。
人類最大の敵である蚊との戦い
厄介なウイルスを媒介する蚊との戦いに、勝利する日はやって来るのでしょうか・・・。
なるべくなら、ウォルトとジョー・ポッター氏が行なってきたような自然な方法で駆除ができたら望ましいと思いますが、広範囲となると難しいので色々な作戦を実行するしかないのでしょう。
さいごに・・・
英語では「蚊に刺される」は、「蚊に噛みつかれる」(bite) の発想をします。
I got bit by a mosquito. 蚊に刺された。
Their bites are very itchy. 蚊に刺されるととても痒い。
日本でも「蚊に食われる」と言う人もいます。
自然と英語的発想をしていたのですね。
ビル・ゲイツが支援する英国のバイオテクノロジー企業OXITEC(オキシテック社)は、GMO MOSQUITOES(遺伝子組換え蚊)をフロリダ・キーズ諸島に数十万匹放ちました。
・この実験は、フロリダ・キーズ モスキート制御委員会から承認を受けており、キーズ諸島の6カ所で約14万匹の遺伝子操作されたオスの卵を放流。
⭕がオーランド。
紫の囲みが「フロリダ・キーズ諸島」です👇
・このオスの蚊は実験室で培養され、メスの子孫の生存を阻害する自己限定遺伝子を持つ。
・オスの卵が孵化して成虫になった後、野生のメスの蚊と交尾し改造遺伝子を受け継ぎ、メスの子孫は成虫になる前に死んでしまう。
・刺されることで病気を広げる可能性のあるヒトスジシマカのメスの個体数を減らすことが目的。
・同社は2016年に、ブラジルの小都市で遺伝子組み換え蚊を使ったプロジェクトを実施し、幼虫の数を80%減少させている。
・この実験は、テキサス州とカリフォルニア州でも実施されている。
毎週蚊の個体数を観察し、
・この実験がどの程度うまくいっているか。
・改造された遺伝形質が時間とともに雄の蚊の個体群から消失するかどうか。
を、判断することが義務づけられる。
こうした取り組みに環境保護団体は、
「遺伝子操作された生物は、われわれがコントロールできるようなものではない。」と懸念を示しています。