ディズニー映画「The Adventure of Ichabod and Mr.Toad」
ディズニー映画『The Adventure of Ichabod and Mr.Toad』は
・『The Legend of Sleepy Hollow(スリーピー・ホロウの伝説)』
・『The Wind in the Willows(たのしい川べ)』
の二本立てパッケージものの映画です。
順序が逆になってしまいましたが、前回は『The Legend of Sleepy Hollow』について書きました。
今回はもうひとつの作品『The Wind in the Willows』の原作について書いていきます。
The Wind in the Willowsについて
原作の『The Wind in the Willows(たのしい川べ)』はどんな作品なのでしょうか。
・イギリス人作家 ケネス・グレアムの、1908年発表の児童文学作品。
・日本では1940年に「たのしい川べ」のタイトルで出版される。他には「ひきがえるの冒険」「川べにそよ風」「川べのゆかいな仲間たち」などの題名でも出版されている。
・1929年に舞台化される。タイトルは「Toad of Toad Hall」。
・ディズニー映画『The Wind in the Willows』公開後、多くの媒体で作品が使われ出した。
・2003年、BBCが行った「イギリス国民が好んで読んでいる小説ランキング」調査では200タイトル中、16位と高評価だった。
The Wind in the Willowsのストーリー
作者自身が子どもの頃に暮らしていた、テムズ川のほとりでの想い出と、息子に創作して聴かせていたベッドタイムストーリーをかけあわせたものを、児童書として発表しました。
『The Wind in the Willows』は直訳すると「柳の中の風」です。
テムズ川沿いに、柳の木が並び、爽やかな風が吹く情景の中、擬人化された4匹の動物たちが、時に仲良く、時に騒動を起こしたりして楽しく過ごす物語です。
こんな感じのイメージです
親が子どもたちに対し、道徳的価値観を教え込むような物語であり、トード氏を中心に繰り広げられるハチャメチャな冒険物語でもあり、世代を問わず多くの人から愛されている児童書です。
トード氏が暴走するシーンを何度も織り交ぜつつ、物語を進めていくところなんかは痛快で、子どもたちだけでなく、大人も飽きないように工夫されています。
全部で12章あります
原作の児童書を12章、ざっくりですがあらすじを書いていきます。
第1章「The River Bank」
春の大掃除をしていたモグラは、ある日突然不満を感じ地下の家を飛び出す。
田舎にある、川のコミュニティを見つけ、ネズミと友達になり一緒に住もうと誘う。
そんな中、アナグマとカエルのことを知り、会ってみたいと思う。
第2章「The Open Road」
アナグマはひとりでいるのが好きだったので、ネズミはモグラを連れて大邸宅に住んでいる金持ちのトード氏に会いに行く。
趣味多彩のトード氏は、ネズミとモグラを馬車で旅をしようと誘う。
しかし、ネズミはこの冒険が楽しいと感じなかった。
旅の二日目、スピードの速い自動車に轢かれてしまう。
馬車が大破し大変な中、トード氏は一瞬で自動車の魅力に取り付かれてしまう。
第3章「The Wild Wood」
数ヶ月、モグラはネズミの家から野生の森へ抜け出す。
しかし、迷子になったモグラは様々な生き物に怯え身を隠す。
昼寝から目覚めたネズミは、何時間もかけてモグラを探し出す。
2匹で家に帰る途中、雪が降り出したためさまよってしまう。
ラッキーなことに、アナグマの家を発見する。
第4章「Mr. Badger」
アナグマは2匹を家に入れ、数日間休ませる。
そして、無謀運転をするトード氏を説得する計画をする。
第5章「Dulce Domum」
12月中旬、ネズミとモグラが家に帰る途中、モグラは昔住んでいた家が近くにあることを思い出す。アナグマの家も好きだけれど、ネズミと一緒に自然の中で暮らす方が好きだと気づく。
第6章「Mr.Toad」
春になり、アナグマはネズミとモグラに頼んでトード氏の暴走運転の件を問いただすことにする。
しかし、トード氏は全然聞く耳を持とうとしない。
そこで、見張りをつけトード氏を軟禁するも、トード氏はネズミを騙して逃げることに成功する。
近くの宿屋に逃げ込むと、そこには自動車が!
思わずその自動車を盗み、暴走運転で大破させてしまう。
トード氏は逮捕され、20年の懲役を言い渡される。
第7章「The Piper at the Gates of Dawn」
※この章は特殊な章で、物語とは無関係となっています。
ネズミとモグラはカワウソの息子ポートリーが行方不明になったことを知り、探しに出かける。
夜に不思議な歌声が聞こえてくる。
ある島に行くと、ギリシャ神話のパーンに似た不思議な神が、ポートリーを連れていた。
歌を歌い、気に入られる。
ネズミとモグラはポートリーをカワウソに渡し、素晴らしい経験をしたことを喜ぶ。
第8章「Toad’s Adventures」
牢屋で寂しそうにしているトード氏を、不憫に思った監察官の娘が脱獄を手伝う。
牢屋の洗濯婦と服を交換し、脱獄する。
しかし、財布を忘れ、列車の切符を買えなくなってしまうが、機関士に連れて行ってもらえることになる。
警察に追いかけられ、トード氏は仕方なく列車から降り歩いて帰ることに。
第9章「Wayfares All」
夏になるとネズミは、なぜ多くの動物たちが冬になると川岸を離れるのか不思議に思う。
船乗りの水ネズミに会い、自分も海に出ようとするが、モグラに引き留められる。
第10章「The Further Adventures of Toad」
トード氏は船頭と出会い、船に乗せてもらおうとするも、船頭は洗濯婦ではなくカエルであることに気がつき追い出す。
そこで、トード氏は船頭の馬を盗み、行商人にその馬を高く売りつけようするも失敗する。
仕方なく、ヒッチハイクをし、偶然にも以前盗んだ車が止まってくれる。
運転手を騙し、運転させてもらうがまたもや車を壊してしまう。
逃げるようにして、川に飛び込むと、下流でネズミに釣り上げられる。
第11章「Like Summer Tempests Came His Tears」
トード氏はイタチ達がトード氏の大邸宅を占拠していること知っていた。
アナグマの指揮のもと、ネズミとモグラと一緒に秘密の通路から邸宅に忍び込む。
パーティーをして騒いでいるイタチ達を驚かせる計画を立てる。
第12章「The Return of Ulysses」
4匹の計画は大成功し、イタチ達を追い払い、さっそく自分達のパーティーの計画を立てる。
トード氏は大冒険の顛末を歌って語ろうとするが、アナグマに止められる。
アナグマのおかげでトード氏は心を入れ替え、おとなしく振る舞うように。
みんなでパーティーを楽しみ、川辺で穏やかな日々を過ごしていく。
くまのプーさんとの関わり
1931年版の『The Wind in the Willows』には、「くまのプーさん」の挿絵を描いたE・H・シェパードが挿絵を手がけています。
イギリスを代表する、作家とイラストレーターのコラボです。
こちらは発売90周年記念バージョン。もちろん表紙と挿絵はE・H・シェパードです👇
シェパードのイラストは世界中の人々に愛されています👇
グレアムとシェパードの交流エピソード
グレアムは『The Wind in the Willows』のイラストをシェパードに依頼。
シェパードは、「オファーがあったときは、くまのプーさん(の仕事)よりも嬉しかった」と述べています。
イラストを描く前に、シェパードはグレアムと会い本の構想を話し合い、グラハムの物語にインスピレーションを与えた森や川を案内してもらいます。
2度目の再会は、描いた下絵を見せるためでした。
73歳のグレアムはすでに、歩くことさえままならない状態でしたが、その絵を見て大変気に入り「(物語の動物たちを)生き生きと描いてくれて、とても嬉しい。」と語りました。
それはグレアムが亡くなる1年前のことでした。
シェパード自身も 『The Wind in the Willows』 のイラストが一番気に入っていると語っています。
引用 https://www.illustrationhistory.org/artists/ernest-howard-shepard
こちらはシェパードの挿絵です。Raty(ネズミ)とMoley(モグラ)がトード氏の大邸宅前を通り過ぎるシーン。見ているだけで、心が温まるような素晴らしい挿絵だと思います👇
ケネス・グレアムのもうひとつのディズニー映画
「The Reluctant Dragon(リラクタント・ドラゴン)」も ケネス・グレアムの1898年の作品です。 1941年にディズニー初の実写版&アニメーションの合成映画で公開されています。
日本では1956年に公開。タイトルは「おちゃめなドラゴン」です。
簡単なあらすじ
・丘の中腹にドラゴンが住んでいるのを見ても全く驚かない少年の物語。
・ドラゴンと戦うためにセント・ジョージがやって来る。
・ドラゴンは国にとって危険な存在であると確信し、少年とセントはドラゴンと意外な勝負をすることになる。
1939年版の書籍の表紙と挿絵もシェパードが担当しています。
優しいタッチの挿絵です👇
続きます
今回は『The Wind in the Willows』の原作について書きました。
モグラ・ネズミ・アナグマもそれぞれ主人公の章があり、決してトード氏だけが主人公ではないのです。
トード氏は自動車のとりこになり、暴走運転して捕まってしまいますが、脱獄して逃げまくります。
しかし、最後は心を入れ替え、穏やかに日々過ごすというハッピーエンドで終わります。
次回はディズニー映画の『The Wind in the Willows』について書いていきます。
ディズニー映画はトード氏が主人公で、ハチャメチャな行動を中心に話は進んでいきます。
それはそれで、とても面白いです。
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